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東京高等裁判所 昭和63年(行ケ)95号 判決

一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(本願発明の要旨)及び三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1 成立に争いのない甲第四号証によれば、本願明細書には、本願発明の技術的課題(目的)構成及び作用効果について、次のとおり記載されていることが認められる。

戦後日本の農耕地は、多量の化学肥料と農薬の施用によつて著しく生産性が向上した反面、環境汚染、農薬公害、土壌の荒廃等を生じ、特に連作障害や土壌病害が激化し生産性を低下させ、有効菌の死滅あるいは激減をもたらしているが、肥沃な土壌とするためには、良質の有機性物質の施用と耕作によつて土壌微生物の活動を促進して真正腐植を理化学的に、また生物的に安定した物質として土壌中に集積していくことが必要である(第三頁第八行ないし第四頁第八行)。

本願発明は前記の知見に基づき、第一に微生物の力を土つくり、堆・廐肥をはじめとする有機性物質の腐植化に活用すること、第二に植物病源菌の抑圧と駆逐を微生物を活用して行うことを技術的課題(目的)とし、この二つの目的を同時に満足させる土壌活性剤を提供するため(第六頁第一一行ないし第一八行)、特許請求の範囲(前記本願発明の要旨)の構成を採用したものであつて、必須の土壌有効菌として好熱性繊維素分解菌の培養物、紅色無硫黄細菌の培養物、枯草菌群細菌の培養物を選択したことに特徴を有する土壌活性剤である。

本願発明は、前記構成を採用したことにより、(1)好熱性繊維素分解菌、紅色無硫黄細菌、枯草菌群細菌の三者の菌が土壌中に定着し、土壌全体の微生物の均衡を保ち、自然な遷移と増殖が行われ、微量栄養素源、増量担体の使用によりこの過程をより確実なものとする、(2)土壌中に数多く存在する放線菌は、植物病原性糸状菌と拮抗関係にあり、それらを死滅又は抑圧するが、紅色無硫黄細菌はこれらの放線菌の基質としてその生育を促す、(3)好気性の枯草菌群細菌は、堆肥製造の初期の段階に必ず出現し、易分解性の有機性物質を強力に消化し、次の好熱性繊維素分解菌の活躍にその遷移の橋わたしをする、(4)本願発明の粉粒状担体は無機質で化学的にも安定しているため効果的に種菌を培養することができ、また土壌活性剤は変質することなく保存に耐える、(5)本願発明における土壌活性剤の形状を粉粒状ないし固型状とすることによつてその貯蔵性と散布を確実、容易なものとする(第三五頁第一七行ないし第三七頁第七行)等の作用効果を奏する。

一方、第一引用例には、好熱性繊維素分解菌の培養物、紅色無硫黄細菌の培養物、有機性窒素源、微量生育因子を炭酸カルシウム粉末等の賦型剤により顆粒とした有機性肥料の熟成に関する微生物の種菌が記載され、該好熱性繊維素分解菌としてクロスリジユム・サーモセルム、バチルス・サーモセルロリテクス、バチルス・サーモフイブリンコルス等が挙げられていること、第二引用例には、土壌中の有機質を醗酵、腐蝕、分解させるのに役立つ菌(例えば放射状菌、ムコール属菌、リゾーブス属菌、アブシデア属菌、ハンセヌラ属菌、枯草菌、アスベギルス属菌、酵母菌、ベニチリウム属菌、ノイロスボラ属菌等の主として好気性菌)を粗糖蜜その他の適当な培養基によつて培養繁殖させた後のその菌を培養基と共にパーライトに吸着させることを特徴とするパーライトを主材とする土壌改良剤が記載されていることは、当事者間に争いがない。

2 原告は、本願発明と第一引用例記載の発明との審決認定の相違点(1)について、本願発明の枯草菌群細菌は第二引用例に全く開示されていない特殊な菌であつて、第一引用例記載の発明に第二引用例記載の発明を組み合わせて本願発明を得ることはできないから、右相違点に関する審決の認定、判断は誤りである旨主張する。

前記1認定事実によれば、本願発明の特許請求の範囲は、枯草菌群細菌について、(1)「胞子や耐久体などを作つて七〇~八〇度c以上の熱処理にあつても生存し」、(2)「好気性あるいは通性嫌気性で酸素の存在下において生育し」、(3)「土壌その他の自然界からWaksman (1922) の培地を用い単離又は集殖された」、「枯草菌群細菌の培養物」と規定していることが認められる。

ところで、成立に争いのない乙第一号証(「化学大辞典」共立出版株式会社昭和四一年一〇月二〇日発行)によれば、「枯草菌 Bacillus subtilis」の項に、「土壌、枯草など自然界に広く分布している好気性胞子形成細菌の代表的な種類(中略)、生育適温三〇~四〇度cで二四~四八時間後に胞子を形成する。この胞子は耐熱性で一〇〇度cで数分から数十分の加熱に耐える」(第六四二頁右欄第八行ないし第一五行)と記載されていることが認められ、(原告は、乙第一号証は、国際細菌命名規約に従つた正式のものでない旨主張するが、右主張に係る事実は、乙第一号証の記載に基づいて枯草菌の通常の性質を認定する妨げとなるものではない。)また、成立に争いのない乙第二号証(芝崎勲著「食品殺菌工学」株式会社光琳書院昭和四二年一一月二〇日発行)によれば、その「表2・3細菌胞子の耐熱性(湿熱)」は、菌株その他の測定条件を異にするが湿熱における殺菌効果につき過去の文献値を集めて表にしたものであつて、菌種Bacillus subtilisは、一〇〇度cで<1>六~一七分、<2>一〇分、<3>一七五~一八五分生存し、<3>のものは八〇度cで七四~七五時間生存すること、その「表2・5細菌胞子の耐熱性(乾熱)」は、同様に乾熱における殺菌効果をみたもので、菌種Bacillus subtilisは一五〇度cで六〇分生存する旨記載されていることが認められる。そして、成立に争いのない甲第五号証(「細菌の同定のバーゼーのマニアル」THE WILLIAMS & WILKINS COMPANY 一九五七年発行)によれば、右マニアルの第六二一頁左欄第三五行ないし第四〇行の記載は、枯草菌の生育温度についての記載であつて、その胞子の生存条件を述べたものでないことが認められるから、この記載をもつて前掲乙第一号証、第二号証に基づく枯草菌の胞子の生存条件に関する前記認定を左右することはできない。

右認定事実によれば、枯草菌は胞子を形成し、好気性を有し酸素の存在下で生育し、かつ一〇〇度cでも数分から百数十分、七〇~八〇度cでは相当長時間(一例では、八〇度cで七四~七五時間)生存するものであるから、本願発明の枯草菌群細菌の規定条件である前記(1)「胞子や耐久体などを作つて七〇~八〇度c以上の熱処理にあつても生存し」、(2)「好気性あるいは通性嫌気性で酸素の存在下において生育し」は、一般の枯草菌群細菌が有する通常の性質と一致し、これをもつて本願発明の枯草菌群細菌が特殊な枯草菌群細菌であるとすることはできない。このことは、前掲甲第四号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、枯草菌群細菌について、「一般に胞子や耐久体などを作つて、七〇~八〇度c以上の熱処理にあつても生存し、また好気性あるいは通性嫌気性で酸素の存在下において生育する。このような土壌、その他の自然界に最も広く分布している多数の細菌を本発明では従属栄養細菌(枯草菌群細菌)と称し、通常次の如き六種類が挙げられる。枯草菌(Bacillus subtilis Cohn)(以下略)」「第一八頁第七行ないし第一四行)と記載されていることが認められ、一般的な枯草菌群細菌についてのみ説明し、格別特殊な枯草菌群細菌について述べていないことからも明らかである。

そして、前記(3)の「Waksman(1922)の培地を用い単離又は集殖された」との条件は、本願発明の枯草菌群細菌が特殊な菌であることを意味するものでないことは、原告が認めて争わないところである。

一方、第二引用例には土壌中の有機質を醗酵、腐蝕、分解させるのに役立つ菌として枯草菌が記載されていることは、前述のとおりである。

そうであれば、本願発明の枯草菌群細菌は、通常の枯草菌群細菌であつて、これをもつて、特殊な菌とすることはできず、第二引用例記載の枯草菌と同一の菌を含むものというべきである。

この点に関し、原告は、本願発明の枯草菌群細菌は生育温度が極めて高い高温菌であるのに対し、第二引用例記載の通常の枯草菌は中温菌でその生育温度を大きく異にしている旨主張する。

前掲甲第四号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、「枯草菌群細菌のほとんどが五〇度c以上でも生育し」(第一九頁第四行、第五行)と記載されていることが認められるが、このような一般的な記述から直ちに本願発明の枯草菌群細菌が特殊な高温菌を採用した趣旨について説明されているとは理解し難いのみならず、本願発明の特許請求の範囲に規定された枯草菌群細菌は前記(1)ないし(3)のとおりであつて、生育温度についての限定は全く存しないから、原告の前記主張は本願発明の要旨としない事項に関するものであり、これをもつて本願発明の枯草菌群細菌に含まれる枯草菌が第二引用例記載の枯草菌とは異なる特殊な菌であるとすることはできない。

また、原告は、前記(1)「七〇~八〇度c以上の熱処理にあつても生存し」の規定条件は、菌の特定のためのスクリーニング(選択獲得方法)を表すものであり、分裂繁殖し生活作用を営んでいる栄養細胞に対する熱処理の最高温度を示すものであつて、胞子の形態で選択獲得するものではない旨主張する。

しかしながら、前掲甲第四号証によれば、本願明細書には、「七〇~八〇度c以上の熱処理にあつても生存し」が栄養細胞に対する熱処理の最高温度を示すという記載は全く存しないのみならず、前記特許請求の範囲には、「胞子や耐久体などを作つて七〇~八〇度c以上の熱処理にあつても生存し」と規定され、発明の詳細な説明にも「一般に胞子や耐久体などを作つて、七〇~八〇度c以上の熱処理にあつても生存し、」と記載されていることは前述のとおりであるから、「七〇~八〇度c以上の熱処理にあつても生存し」は、胞子や耐久体の形態において七〇~八〇度c以上の熱処理にあつても生存することを意味することは明らかであつて、原告の右主張は理由がない。

したがつて、本願発明と第一引用例記載の発明の相違点(1)について、有機物を醗酵、腐蝕、分解させるのに役立つ菌の培養物を土壌改良剤とすることは公知であり、その場合の菌として枯草菌は公知のものである (第二引用例参照)が、この枯草菌と本願発明のそれとは実質的に同種のものであるとした審決の認定に誤りはない。

3 原告は、前記相違点(1)について、本願発明は第一引用例及び第二引用例記載の発明と技術的課題(目的)を異にするものであり、第二引用例に記載された多数の有効菌種から枯草菌を選択し、第一引用例記載の発明に第二引用例記載の発明を組み合わせて本願発明を得ることはできない旨主張する。

本願発明は、第一に微生物の力を土つくり、堆・廐肥をはじめとする有機性物質の腐植化に活用すること、第二に植物病源菌の抑圧と駆逐を微生物を活用して行うことを技術的課題(目的)とすることは前述のとおりである。そして、成立に争いのない甲第二号証によれば、第一引用例には、本願発明の第一の技術的課題に相当する、「本発明の目的は、この好熱性繊維素分解菌を培養し、これを種菌として散布・増殖し、有機質肥料の熟成をより確実に、かつより促進しようとするものである」(第二頁左上欄第六行ないし第九行)との記載が存するが、第二の技術的課題について明記されていないことが認められる。

しかしながら、前掲甲第二号証によれば、第一引用例記載の発明も本願発明と同じく、化学肥料や農薬の偏重による土壌の荒廃を土壌有効菌の活用によつて解決しようとするものであり、右発明によつて奏するすぐれた効果として、「好熱性繊維素分解菌とともに種菌として顆粒中に存在する紅色無硫黄細菌の繁殖は、前者の生育を妨害するようなことがないばかりでなく、むしろ促進する傾向を示す。さらに後者の繁殖は、好熱性繊維素分解以外の有機性肥料の熟成に関与する細菌群や放線菌等の増殖、活動に好影響を与えると同時に、大腸菌、チフス菌その他の病源菌および有害糸状菌等の生育を抑止する」(第三頁左上欄第二〇行ないし右上欄第八行)と記載され、さらに、実施例4には、「ウネ作り前に一〇a当り本発明の顆粒状種菌一〇〇kgを元肥の有機質肥料(中略)および配合肥料に混入して施用する。消毒、その他の肥培管理は通常どおり実施したが、前年度の青枯れ病および根くされ病が全然発生しなかつた。(中略)本発明の顆粒状種菌の使用によつて連作の可能であることがわかつた」(第三頁右下欄第一八行ないし第四頁第六行)と記載されていることが認められるから、当業者が第一引用例の記載事項に基づいて微生物の力を有機性物質の腐植化に活用するのみならず、植物病源菌の抑圧と駆逐に活用することを技術的課題(目的)として第一引用例記載の発明の改良を図ることに格別の困難はないというべきである。

この点に関し、原告は、第一引用例記載の発明の効果に関する右記載は、「腐植化」のメカニズムの共存共生の微生物生態系を形成することの現象を記載したもので、しかもそこでの病源菌は植物病源菌ではなく、実施例4に関する記載も微生物培養物の自然界への使用に対する悪影響がないことと発明の有用性について言及したにすぎない旨主張する。

しかしながら、第一引用例の前記記載事項は、「その他の病源菌および有害糸状菌」と記載されていることから明らかなように、人間に対する病源菌に限らず植物病源菌を含むものであり、実施例4にその一例が記載されていると理解できるから原告の右主張は理由がない。

そして、本願発明は、土壌有効菌として第一引用例記載の発明における好熱性繊維素分解菌と紅色無硫黄細菌に、さらに枯草菌群細菌を加えたことを特徴とする土壌活性剤であるが、本願発明の枯草菌群細菌は通常のものであり、一方、第二引用例には土壌有効菌として本願発明の枯草菌群細菌に含まれる枯草菌と実質的に同一の枯草菌が開示されていることは前述のとおりであるから、前記技術的課題を達成するため第一引用例記載の発明における土壌活性剤に、枯草菌を併用することは当業者に容易に想到し得ることというべきである。

この点に関し、原告は、第二引用例には有機物を醗酵・腐蝕・分解させるのに役立つ菌として一〇例が開示されているが、その微生物名は合計一三七三種以上となり、亜種、変種や型(form)などを考えるとその二~三倍に及ぶから、何の基準ももたずにその中の一種にすぎない枯草菌を選択することは当業者が容易になし得ることではない旨主張する。

しかしながら、成立に争いのない甲第三号証によれば、第二引用例には、土壌中の有機質を醗酵、腐蝕、分解させるのに役立つ菌として、前述の一〇種、すなわち、放射状菌、ムコール属菌、リゾープス属菌、アブシデア属菌、ハンセヌラ属菌、枯草菌、アスペギルス属菌、酵母菌、ベニチリウム属菌、ノイロスポラ属菌を具体的に挙げていることが認められ、この中から枯草菌を選択することに格別の困難があるとはいえない。

また、原告は、本願発明は、特殊な規定条件を有する枯草菌群細菌を採択することにより所期の目的を達成したものであり、第二引用例に枯草菌が記載されているからといつて第一引用例記載の発明と第二引用例記載の発明を組み合わせて本願発明を得ることは当業者が容易になし得ることではない旨主張する。

しかしながら、本願発明における枯草菌群細菌は特殊な菌でないことは前述のとおりである。そして、前掲甲第四号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、枯草菌群細菌を併用することの技術的意義、作用効果については、「拮抗現象は本発明で選択した枯草菌群細菌にも広く認められ、バシトラシンやバシリシンなどの抗生物質を分泌し、植物病原菌の拮抗菌として働く」(第九頁第二行ないし第五行)、「その栄養分が有害病原菌に利用されないように、平凡な一般細菌、雑菌などと称されて無用無害なものとして取り扱われていた枯草菌群細菌を添加し効果的に利用した」(第一〇頁第八行ないし第一一行)、「土壌中に存在または添加された有機性物質の分解腐植化にあたつて主要な働きをする好熱性繊維素分解菌(「好熱性繊維素分解」は「好熱性繊維素分解菌」の誤記と認める。)と紅色無硫黄細菌の既知の選択にもうひとつ枯草菌群細菌を加え(中略)この三者の菌が土壌中に定着し、土壌微生物生態系の一つの重要な基点、要となつて土壌全体の微生物の均衡を保ち、自然な遷移と増殖が行なわれる」(第三五頁第一二行ないし第三六頁第二行)、「好気性の枯草菌群細菌は堆肥製造の初期の段階に必ず出現し、易分解性の有機性物質を強力に消化し、次の好熱性繊維素分解菌の活躍に、その遷移の橋わたしをする」(第三六頁第一五行ないし第一八行)と記載されているのみで、それ以外には枯草菌群細菌を併用した場合における具体的効果についての記載はなく、また、枯草菌群細菌を併用しない場合との比較例についての検討も何らなされていないことが認められる。しかも、前掲甲第四号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、紅色無硫黄細菌の培養物について、「その存在は微生物のみならず高等植物の生育や果実の品質にも好結果をもたらしている。またその生菌体は放線菌の基質となり、その分泌物は藻類の増殖を促す。周知のとおり放線菌は植物病原性糸状菌の増殖を抑圧し、藻類は空中窒素を固定するなどの有益な働きをする。なかでも注目すべきことは、本菌の分泌物中にATPやADP、GDPの含まれることで、このような高エネルギーリン酸化合物は植物根圏域の活性化に大きな影響を与えていることは間違いない」(第一六頁第七行ないし第一七行)、「土壌中に数多く存在する放線菌は、植物病原性糸状菌と拮抗関係にあり、それらを死滅または抑圧するが、紅色無硫黄細菌はこれらの放線菌の基質として、その生育を促す」(第三六頁第一一行ないし第一四行)と記載されていることが認められ、これらの記載事項に照らすと、本願発明において「植物病源菌の抑圧と駆逐による連作障害の克服」という作用効果を達成できるのは、主として紅色無硫黄細菌を土壌有効菌として使用したことにあり、このことは、紅色無硫黄細菌の繁殖は病源菌の生育を抑止するとの第一引用例の前記認定の記載事項とも一致するものである。

そうすると、本願発明において枯草菌群細菌を採択したことに格別顕著な技術的意義を認めることはできないのであつて、「土壌改良剤の有効菌として枯草菌は公知のものであるから、第一引用例の土壌活性剤の活性の向上を意図して、本願発明のごとき枯草菌を更に併用することは当業者ならば容易に想到し得ることである」とした審決の認定、判断に誤りはない。

4 以上のとおりであるから、本願発明と第一引用例記載の発明との審決認定の相違点(1)についての審決の判断は正当であつて、本願発明は第一引用例及び第二引用例の記載から当業者が容易に発明をすることができたものというべきであり、審決に原告主張の違法はない。

三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当として棄却することとする。

〔編注〕本願発明の要旨は左のとおりである。

クロストリジユム・サーモセルム、バチルス・サーモフイブリンコルス、バチルス・サーモセルロリテクス、バチルス・セルローゼデゾルベンス型細菌から選ばれた一種又は複数種の好熱性繊維素分解菌の培養物と、紅色無硫黄細菌の培養物と、胞子や耐久体などを作つて七〇~八〇度c以上の熱処理にあつても生存し好気性あるいは通性嫌気性で酸素の存在下において生育し土壌その他の自然界からWaksman(1922)の培地を用い単離又は集殖された枯草菌群細菌の培養物と、微量有機窒素源、ビタミン類を含む微量栄養素源とを、石灰岩々粉、ドロマイト岩粉、パーライト、バーミキユライト、ゼオライト、けいそう土、塩基性岩々粉などの粉粒状担体で混和して、粉粒状ないし固型状としたことを特徴とする土壌有効菌を主体とする土壌活性剤。

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